第331章

 もしこれが最初の頃だったなら、望月琛のその態度は、前田南にとって狂喜乱舞するほどの幸せだったに違いない。

 しかし今、彼女の心はとうに冷え切っている。かつてのような純真さは見る影もない。どれほど彼が穏やかな良き夫を演じようとも、今の南にできるのは、ただ娘のククの前で「良き母親」「元気な顔」を演じ続けることだけだった。

 望月琛が部屋を出ていくと、ククがくるりと南の方へ向き直った。その表情は、不意に真剣なものに変わる。

「ママ、パパと一緒に暮らすの、嫌?」

「え?」

 突然の問いかけに、前田南は虚を突かれた。驚いてククを見つめ返し、反射的に問い返す。

「どうしてそんなこと言うの?...

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